教育カリキュラム
教育理念
私たちが育てるのは、日本語が話せる人ではありません。日本で信頼され、長く活躍できる人材です。教育とは、試験に合格することではなく、日本社会で信頼される力を身につけることだと考えています。
桜花教育プログラム ― 6つの柱
6つを切り離さず、毎日の中で同時に進めます。日本語だけ、実技だけ、という日はありません。
① 日本語教育
『みんなの日本語』初級I・II(約300時間)を土台に、現場で本当に使う日本語を優先して積み上げます。ゴールは JLPT N4 / JFT-Basic A2 です。
1 内容 2 どこで役に立つか
| 学ぶこと | 内容 | どこで役に立つか |
|---|---|---|
| ひらがな | 46文字の読み書き。単語・写し書き・聞き取りを毎日反復します。 | 掲示物・名前・出席簿。すべての土台です。 |
| カタカナ | 外来語の読み書き。工具・材料・カタカナ語の職場語彙とセットで覚えます。 | ヘルメット・ドリル・セメントなど現場の名前。 |
| 漢字 | 数字・曜日・時間・寸法・安全表示など、現場で目にする漢字から始めます。 | 図面・作業指示書・安全掲示・給与明細。 |
| 文法 | みんなの日本語 L1〜L50。て形・可能形・受身・条件形まで段階的に。 | 指示を正しく理解し、自分の状況を説明できる。 |
| 会話 | 毎日のペア練習とロールプレイ。あいさつ→報告→依頼→断り方まで。 | 朝礼・作業中のやり取り・休憩時の雑談。 |
| 読解 | 作業指示書・安全掲示・簡単な社内文書を読む練習。 | 「立入禁止」「使用前点検」を読み違えない。 |
| 聴解 | 数字・寸法・指示語(右/左/もっと/ストップ)の聞き取りを重点的に。 | 騒音のある現場でも指示を聞き取れる。 |
| 作文 | 動画を見た後の感想文、1日の振り返り、自己紹介文を毎週書きます。 | 考えを整理して伝える力。面接の受け答えにも直結。 |
| 敬語 | 尊敬語・謙譲語・丁寧語の使い分け。先輩と上司への話し方を型で覚えます。 | 面接・報告・電話。日本の職場で最も差が出る部分。 |
| 電話対応 | 名乗り方・取次ぎ・欠勤や遅刻の連絡を、実際に電話をかけて練習します。 | 体調不良や事故のとき、自分で会社に連絡できる。 |
| 職場日本語 | 報連相の型、指差呼称、KY(危険予知)の言い方、謝罪と確認の言葉。 | 「わかりません」と言える。これが一番安全です。 |
| JLPT対策 | N5(中間目標)→ N4(就職要件)。過去問演習と弱点別の補習。 | 在留資格の日本語要件。履歴書に書ける資格。 |
| JFT-Basic対策 | A2レベルの4技能。CBT形式に慣れる演習を行います。 | 特定技能の日本語要件。ネパール語でも受験できます。 |
② 職業教育(職種別)
職種ごとに「仕事内容・使う日本語・専門用語・安全・仕事の流れ・日本企業で求められること」を学びます。第1期の実技(体を動かす訓練)は建設分野で行い、他の分野は座学で基礎を固めます。実技の対象分野は順次広げます。
建設
第1期 実技あり- 仕事内容
- 解体・土木(掘削・転圧・丁張り)・総合建設。運搬、墨出し、採寸、産廃分別、片付けまで。第1期はこの3分野を実技で行います。
- 使う日本語
- 指示語(右/左/もっと/ストップ)、寸法と数字、報連相、危険を伝える言葉。
- 専門用語
- 墨出し・丁張り・玉掛け・養生・5S・KY・指差呼称・産業廃棄物。
- 安全教育
- 毎朝KYと保護具チェック。安全の筆記とKY実演に合格しない生徒は実技に入れません。
- 仕事の流れ
- 朝礼 → KY → 段取り → 作業 → 片付け・清掃 → 終礼。1日を通して繰り返します。
- 日本企業で求められること
- 時間厳守、あいさつ、報告、危険を見つけたらすぐ止める判断力。
介護
座学で学ぶ- 仕事内容
- 高齢者の食事・入浴・移動の介助、見守り、記録。身体だけでなく気持ちに寄り添う仕事です。
- 使う日本語
- 敬語、体調を尋ねる表現、痛みや不調の聞き取り、記録に書く言葉。
- 専門用語
- バイタル・移乗・体位変換・清拭・見守り・申し送り。
- 安全教育
- 感染対策、腰を痛めない介助姿勢、転倒防止、事故時の連絡。
- 仕事の流れ
- 申し送り → 朝の介助 → 食事 → 入浴・レク → 記録 → 申し送り。
- 日本企業で求められること
- ていねいな言葉づかい、報告の速さ、利用者と家族への敬意。
農業
座学で学ぶ- 仕事内容
- 施設園芸・露地栽培の播種、定植、管理、収穫、選別、出荷。季節で作業が大きく変わります。
- 使う日本語
- 作物名、作業の指示、数量と規格、天候の言葉。
- 専門用語
- 定植・摘果・追肥・選果・出荷規格・ハウス。
- 安全教育
- 農薬の取り扱い、機械(管理機・運搬車)の安全、熱中症対策。
- 仕事の流れ
- 朝礼 → 収穫 → 選別・箱詰め → 出荷 → 片付け。
- 日本企業で求められること
- 早朝の時間厳守、ていねいな手さばき、天候に合わせて動ける柔軟さ。
製造
座学で学ぶ- 仕事内容
- 組立・加工・検査・梱包。決められた手順を、同じ品質で、同じ速さで続ける仕事です。
- 使う日本語
- 作業標準書を読む日本語、不良を報告する言い方、数量の伝え方。
- 専門用語
- 工程・治具・ロット・不良・歩留まり・段取り替え。
- 安全教育
- 回転部への巻き込み防止、保護具、非常停止ボタンの位置。
- 仕事の流れ
- 朝礼 → 段取り → ライン作業 → 検査 → 記録 → 清掃。
- 日本企業で求められること
- 手順を勝手に変えない、異常に気づいたら止めて報告する。
外食
座学で学ぶ- 仕事内容
- 調理補助、盛り付け、接客、レジ、清掃。速さと清潔さが同時に求められます。
- 使う日本語
- 接客のあいさつ、注文の聞き取り、アレルギーの確認、丁寧語。
- 専門用語
- 仕込み・オーダー・ホール・バッシング・HACCP。
- 安全教育
- 包丁と油の扱い、火傷防止、手洗いと衛生管理、アレルギー事故の防止。
- 仕事の流れ
- 仕込み → 開店 → ピーク対応 → 片付け → 清掃。
- 日本企業で求められること
- 笑顔とあいさつ、忙しい時間帯でも手順を守る落ち着き。
物流
座学で学ぶ- 仕事内容
- 入荷、仕分け、ピッキング、梱包、出荷。伝票と現物を正確に合わせる仕事です。
- 使う日本語
- 住所と地名の読み、数量と個数、伝票の日本語、確認の言い方。
- 専門用語
- 入荷・検品・ピッキング・仕分け・パレット・伝票。
- 安全教育
- フォークリフトの周辺、台車の扱い、重量物の持ち上げ方、通路の確保。
- 仕事の流れ
- 朝礼 → 入荷検品 → 仕分け → ピッキング → 梱包 → 出荷。
- 日本企業で求められること
- 数を間違えない正確さ、分からないときに確認する姿勢。
清掃
座学で学ぶ- 仕事内容
- 建物・客室・共用部の清掃。決められた手順と時間で、確実に仕上げる仕事です。
- 使う日本語
- 薬剤名、場所の名前、点検表の日本語、報告の言い方。
- 専門用語
- 日常清掃・定期清掃・ワックス・ポリッシャー・チェックリスト。
- 安全教育
- 薬剤の混用禁止、転倒防止(濡れ床表示)、換気、手袋の着用。
- 仕事の流れ
- 点検 → 準備 → 清掃 → 仕上げ確認 → 記録 → 報告。
- 日本企業で求められること
- 見えないところまで手を抜かない誠実さ、時間内に終える段取り力。
※ 第1期に実技(体を動かす訓練)を行うのは建設分野です。介護・農業・製造・外食・物流・清掃は、仕事内容・使う日本語・専門用語・安全・仕事の流れを座学で学びます。実技の対象分野は、設備と講師が整いしだい順次広げます。
③ 日本生活教育
渡日してから困ることは、たいてい日本語ではなく「手続きとルール」です。実際の書類・アプリの画面・地図を見ながら、13項目を練習します。
④ 社会人教育
桜花がいちばん時間をかける教育です。日本の職場で評価されるのは、技能より先にこの12項目です。毎週木曜を固定コマにし、毎日の朝礼・終礼でも点数化して記録します。
⑤ 就職教育
面接に受かるためだけの教育ではありません。就職した後、契約や給与でつまずかないための知識まで教えます。
⑥ 動画学習・作文教育
2日に1回、映像を見てから書く「映像学習会」を行います。教室の日本語だけでは、速さのある本物の日本語に追いつけないためです。
- 日本語授業の動画
- 日本映画
- 日本ドラマ
- 日本の音楽
- ニュース
- 職場の動画
- 安全教育の動画
- 生活の動画
レベル別教育
同じ教室・同じ時間割で運営し、午前の日本語だけ習熟度別のクラスに分かれます。学費はどのコースも共通20万円です。
1 初心者コース 2 N5コース 3 N4コース 4 経験者コース
| 項目 | 初心者コース | N5コース | N4コース | 経験者コース |
|---|---|---|---|---|
| 対象者 | 日本語の学習歴がまったくない方。ひらがなから始めます。 | ひらがな・カタカナが読める方、または初心者コースを終えた方。 | JLPT N5 に合格している方、または同等の力がある方。 | JLPT N4 をお持ちの方、または日本での就労・留学の経験がある方。 |
| 教育内容 | 文字・基本のあいさつ・数字。実技は安全とKYから。 | みんなの日本語 L1〜L25。実技は工具・運搬・墨出し。 | みんなの日本語 L26〜L50、敬語・受身。実技は職種ローテーション。 | 面接特訓・特定技能試験対策・日本式マナーに集中。N3挑戦も可能。 |
| 卒業目標 | JLPT N5 合格レベル(中間目標)へ到達する。 | JLPT N5 合格。次のN4段階へ進む。 | JLPT N4 / JFT-Basic A2 合格(就職の日本語要件)。 | 面接通過レベルの受け答えと、分野の技能評価試験の合格を目指す。 |
| 期間の目安 | 本科の1〜3か月目にあたります。 | 本科の3〜4か月目にあたります。 | 本科の5〜9か月目にあたります。本科全体で約10か月。 | 就職速習コース。2〜3か月が目安です。 |
| 日本就職までの流れ | N5 → N4 → 技能試験 → 面接 → 契約 → 在留資格申請 → 渡日。 | N5合格後、N4へ。以降は同じ流れです。 | N4/JFT合格 → 技能試験 → 面接 → 契約 → 在留資格申請 → 渡日。 | 面接と技能試験に集中し、条件が整えば早い時期の渡日を目指します。 |
※ N4をお持ちの方や日本での経験がある方は、本人の日本語力・技能試験の結果・企業の採用状況などにより、初心者の方より短い期間で日本就職を目指せる可能性があります。ただし期間・採用・試験の合格・在留資格の許可を保証するものではありません。
1日の教育スケジュール
10:00集合・18:00終了。時間割だけでなく、その時間に何を学び、何が身につくのかまで書いています。
身につくこと:時間厳守と安全意識。人前で大きな声を出す習慣。日本の現場は必ずここから始まります。
身につくこと:指示を正確に理解し、自分の状況を文で説明できる力。
身につくこと:騒がしい現場でも聞き間違えない耳と、掲示を読み違えない目。
身につくこと:日本の食事マナーと、休憩時間の使い方。
身につくこと:体で覚えた作業。日本語で指示を受けながら手を動かせる状態。
身につくこと:自分の体調を言葉にして伝える習慣。無理をしない判断。
身につくこと:資格に必要な得点力と、自分の言葉で答える面接力。
身につくこと:その日の弱点をその日のうちに補い、自分で学び続ける力と仕事の習慣。
曜日ごとに午後の実技テーマが変わります(月=安全と工具/火=運搬・5S・総合建設/水=墨出し・解体と産廃分別/木=基礎作業・土木+ビジネスマナー固定コマ/金=模擬現場と小テスト)。土日は休みです。
入学から卒業までのロードマップ(本科・約10か月)
月ごとに、日本語・実技・その月の山場を並べました。期間は目安で、個人差があります。渡日の時期は企業の採用と在留資格の審査によって前後します。
- 1
1か月目
日本語:ひらがな・カタカナ、みんなの日本語 L1–L8。/実技:フェーズ0(安全・KY・5S・保護具・あいさつ)。/山場:月例テスト①と建設小テスト(安全)。
- 2
2か月目
日本語:L9–L16(て形)。/実技:工具の名前と使い方、運搬、墨出しの基礎、現場日本語。/山場:月例テスト②と建設小テスト(工具)。
- 3
3か月目
日本語:L17–L25。/実技:フェーズ1へ。総合建設の基礎。/山場:月例テスト③=N5模試。
- 4
4か月目
日本語:JLPT N5 受験(中間目標)。/実技:解体・産廃分別。/山場:N5受験と建設小テスト(産廃)。
- 5
5か月目
日本語:N4へ。L26–L31。/実技:土木(掘削・転圧)。/山場:月例テスト④。就職教育(履歴書)を開始。
- 6
6か月目
日本語:L32–L37。/実技:土木(丁張り)。/山場:月例テスト⑤。生活教育(銀行・病院・市役所)を集中的に。
- 7
7か月目
日本語:L38–L44(受身)。/実技:3職種ローテーションで総仕上げへ。/山場:面接特訓の本格化。自己紹介の録音と修正。
- 8
8か月目
日本語:L45–L50(敬語)。/実技:3職種ローテーション。/山場:N4/JFT模試と建設小テスト(土木)。
- 9
9か月目
日本語:JFT-Basic/JLPT N4 受験=就職の日本語要件に挑戦。/実技:フェーズ2 模擬現場プロジェクト。/山場:受験と技能評価試験の対策。
- 10
10か月目
就職準備:面接、分野別の知識、日本式マナーの総仕上げ。/実技:渡日前の個別仕上げ。/山場:卒業面接と企業マッチング。
- 11
卒業後(渡日まで)
企業面接 → 雇用契約 → 在留資格認定証明書の申請 → 査証申請 → 渡日。この期間も無料で補習・面接練習を続けます。審査には時間がかかり、時期は保証できません。
学習評価
点数だけを見るのではなく、日々の姿勢まで記録します。記録は本人にも返し、面談で一緒に見ます。企業へは、日本語のレベルだけでなくこの記録も添えて紹介します。
卒業時に身につく力
下記は到達目標です。試験の合格、企業の採用、在留資格の許可、渡航時期を保証するものではありません。
必ずお読みください
- 上記は到達目標です。試験の合格、企業の採用、在留資格の許可、渡航時期を保証するものではありません。
- カリキュラムは第1期の実績をもとに見直します。内容と期間は変わることがあります。
- 実技を行う分野は第1期では建設です。他分野は座学で学び、実技の対象は順次広げます。